2012/05/16

mbed + FeliCa リーダライタでドアの鍵開閉システム

mbed + FeliCa リーダライタを使って、ドアの鍵を開閉するシステムをつくってみました。
まずは、こちらをごらんください。



このシステムは、
  • 特定の Suica(FeliCa) カードをリーダライタにかざすと鍵を開閉する
  • 他の FeliCa カードだと開閉しない
ようになっています。
動画では、はじめに Suica で鍵開閉を行い、次に他の Felica カードをかざしても鍵開閉が行われないことを示しています。
特定の Suica カードの認証は、単にカードの IDm を読み取って比較しているだけです。

以下、材料と参考にさせていただいた情報などです。

材料
  1. mbed
  2. rb303 サーボモータ
  3. FeliCa リーダー・ライター RC-S620S
  4. FeliCa RC-S620S ピッチ変換基板(フラットケーブル付き)
  5. 磁石とか金具とか端材
を用いています。
1,3,4 については スイッチサイエンスさんより購入可能です。
2 のサーボモータに関しては、たぶん秋葉原の千石電商さんで購入しました。
5 の磁石とか金具とか端材はホームセンターで購入したり、拾ったりしました。

参考情報
失敗談

実は、FeliCa ピッチ変換基盤と mbed のつなぎ方を間違えてしまい、RC-S 620S リーダ・ライタを1台壊してしまいました。
上の写真は 材料3 のピッチ変換基盤です。
僕は一番上が VCC だと勘違いして mbed に接続し、リーダライタを壊してしまいました。
正しい接続の仕方は、上から
  1. なし
  2. なし
  3. GND
  4. Serial RX
  5. Serial TX
  6. VOUT(3.3V)
です。くれぐれもご注意を。

ですが、なんと嬉しいことに、twitter 上で僕の失敗を知った @wnaitou さんが、新しいFelica リーダライタを贈って下さいました!そのおかげで、この鍵開閉システムができました。
@wnaitou さん、どうもありがとうございました!! m(_ _)m

おまけ

iphone から操作できるようにもしました。



こちらは、
iphone -> the Internet -> 自宅サーバ -> mbed -> servo
という経路になっています。

2012/01/30

SystemTapで関数の呼び出し元を取得する

SystemTapはスクリプトで気軽にLinux Kernelの動作を調査できる素敵なツールです.
この記事は,SystemTapで関数の呼び出し元を取得する方法についてのメモです.
Tapset Referenceを参考にし,Context Functionsのfunction:callerを使用します.
最も簡単なものだと,このような形になります.


probe kernel.function("schedule").return {
  printf("caller : %s", caller())
}

出力はこんな感じ.Kernel内のschedule()関数を呼び出した関数名と,アドレスが出力されます.

[eiichi@fedora]~/work/stap% sudo stap schedule.stp
caller : cpu_idle 0xffffffffc04023d0
caller : cpu_idle 0xffffffffc04023d0
caller : run_ksoftirqd 0xffffffffc04558ed
caller : cpu_idle 0xffffffffc04023d0


さて,簡単な応用として,linux/kernel/sched.cで定義されているschedule()関数を呼び出している関数Top20を表示させてみましょう.
systemtap scriptは以下のようになります.


global callers

function print_top() {
  cnt=0
  printf("%-50s\tCount\n", "Caller")
  printf("---------------------------------\n")
  foreach( [name] in callers-) {
    printf("%-50s\t%5d\n", name, callers[name])
    if (cnt++ == 20)
      break
  }
  printf("---------------------------------\n")
}

probe kernel.function("schedule").return {
  callers[caller()]++
}

probe end {
  print_top()
  delete callers
}





eiichi@fedora]~/work/stap% sudo stap schedule_caller_top.stp -c "sleep 1"
Caller                                             Count
---------------------------------
cpu_idle 0xffffffffc04023d0                          332
worker_thread 0xffffffffc0468418                     166
schedule_hrtimeout_range_clock 0xffffffffc09202e7    116
futex_wait_queue_me 0xffffffffc047ec83                52
do_nanosleep 0xffffffffc0920158                       18
work_resched 0xffffffffc0921302                       17
schedule_timeout 0xffffffffc091fa05                   12
run_ksoftirqd 0xffffffffc04558ed                       8

---------------------------------




sleep ではcpu_idleが多くなります.
ちなみに,hackbenchを動かすと,このような感じです.

[eiichi@fedora]~/work/stap% sudo stap schedule_caller_top.stp -c "hackbench 10"
Running in process mode with 10 groups using 40 file descriptors each (== 400 tasks)
Each sender will pass 100 messages of 100 bytes
Time: 0.374
Caller                                             Count
---------------------------------
schedule_timeout 0xffffffffc091fa05                 1590
work_resched 0xffffffffc0921302                      735
cpu_idle 0xffffffffc04023d0                          349
worker_thread 0xffffffffc0468418                      83
rwsem_down_failed_common 0xffffffffc0920d25           22
schedule_hrtimeout_range_clock 0xffffffffc0920375     17
do_wait 0xffffffffc0452025                            10
schedule_hrtimeout_range_clock 0xffffffffc09202e7      5
run_ksoftirqd 0xffffffffc04558ed                       5
do_nanosleep 0xffffffffc0920158                        2
futex_wait_queue_me 0xffffffffc047ec83                 1
---------------------------------
ここで,schedule()関数ではなく,他の関数でも,呼び出し元Top20を表示させる場合を考えてみましょう.いちいちstap scriptを書き換えるのも面倒です.
付け焼刃的ですが,shell scriptと組み合わせると,簡単にできます.

#!/bin/sh
func=$1
cmd=$2
stap -e 'global callers
function print_top() {
  cnt=0
  printf("%-50s\tCount\n", "Caller")
  printf("---------------------------------\n")
  foreach( [name] in callers-) {
    printf("%-50s\t%5d\n", name, callers[name])
    if (cnt++ == 20)
      break
  }
  printf("---------------------------------\n")
}
probe kernel.function("'$func'").return {
  callers[caller()]++
}
probe end {
  print_top()
  delete callers
}' -c "$cmd"

使い方はこんな感じ.
linux/kernel/sched_fair.c のupdate_curr()関数で試してみました.
[eiichi@fedora]~/work/stap% sudo sh caller_top.sh update_curr "hackbench 10"
Running in process mode with 10 groups using 40 file descriptors each (== 400 tasks)
Each sender will pass 100 messages of 100 bytes
Time: 0.469
Caller                                             Count
---------------------------------
update_cfs_shares 0xffffffffc043c777               21460
put_prev_task_fair 0xffffffffc043d062              18516
dequeue_entity 0xffffffffc043cb79                  12369
enqueue_entity 0xffffffffc043d0e1                  12363
check_preempt_wakeup 0xffffffffc043c51f             9622
task_tick_fair 0xffffffffc043c90d                   1968
task_fork_fair 0xffffffffc043c308                    400
---------------------------------


ちなみにhackbench 10 は400個のtaskを生成するので,task_fork_fairからのupdate_curr呼び出し回数がちょうど400になってますね.

参考
RedHat Tapset Reference Manual

2011/01/05

Haskellでlist monadを使って完全順列を生成してみました

完全順列(撹乱順列とも)とは順列を置換と見た場合、不動点をもたない置換のことをいいます。順列の要素数を無限大にした極限をとったとき、完全順列の個数(モンモール数)とすべての順列の個数(n!)の比が1:e(eは自然対数の底)になり、世の中の物好きを惹きつけています。
前回のN-Queens問題につづいてlist monadを利用して関数型言語のHaskellで完全順列を生成するコードを書いてみましょう。
*Main> derangement ['c','o','n','s']
>>["ocsn","onsc","oscn","ncso","nsco","nsoc","scon","snco","snoc"]
こんな感じになって欲しいのです。順列を生成した後にfilterを掛けるのは非効率的なのでやめておきます。
書いてみると以下のようになりました。
import Data.List

derangement xs = drg xs xs

drg [] ys = return []
drg xs (y:ys) =
  delete y xs >>=
  \x -> map (x:) (drg (delete x xs) ys)

Monadを利用することを考えると、こんなに簡単に書けるんですね。
素晴らしきかな、Haskell、Monad!

2011/01/03

Haskellでlist monadを使ってN-Queens問題を解いてみました

N-Queens問題は8-Queens問題の一般形で、 N x N のチェスのボード上にN個のクイーンが互いに攻撃しあわないような配置を求める問題です。バックトラッキングアルゴリズムで解くと非常に効率よく解ける例として有名です。
今回はHaskellでlist monadを使って解いてみましょう。List monadを用いることで簡単に楽しく書けるという利点があります。
動機は、いろいろ調べたのですが、Haskellで単純で速そうなものが見つからなかったためです。
アルゴリズムとしては当然バックトラッキング。
クイーンの配置を表すデータ構造としては [Int] を用いましょう。[(Int, Int)]としてしまうと冗長な感があります。経験上データ構造はなるべくダイエットして必要十分に近いものが理想的だと思います。そのほうが簡単に楽しく書けます。

まずlist monadの定義を確認しましょう。List は Monad型クラスのインスタンスです。その定義はGHC.Baseに記載されています。

instance  Monad []  where
  m >>= k             = foldr ((++) . k) [] m
  m >> k              = foldr ((++) . (\ _ -> k)) [] m
  return x            = [x]
  fail _              = []

bind関数>>= がfoldrを使って書かれていますが、xs >>= f = concat (map f xs)と同じことです。
以上から書いてみると、こんな感じになりました。

import Data.List

type Queens = [Int]

nQueens :: Int -> [Queens]
nQueens n = solve [1..n] []

solve :: Queens -> Queens -> [Queens]
solve [] ys = return ys
solve xs ys = 
  xs >>= func 
  where
    func x 
      | isOK (x:ys)  = solve (delete x xs) (x:ys)
      | otherwise    = fail "failed!" 

isOK :: Queens -> Bool  
isOK []  = True
isOK (q:qs)  =  (all (/= 0) . zipWith (-) [1..(length qs)] . (map (abs . (-) q))) qs

速度計測

比較対象
LiteratePrograms.org
pi8027
上のLiteratePrograms.org(以下LPと呼称)のものは同じくバックトラッキングとリストモナドを用いたもの、下のものはしらみ潰し探索法を用いたものです。しらみつぶし探索法は一般には遅いのですが、とてもコーディングしやすいという利点があります。

計測結果(単位:sec)

NEtsukataLPpi8027
90.230.732.73
101.063.8427.33
115.4423.83--

なんで速いの?
しらみ潰し探索法よりもバックトラッキングのほうが速いのは明らかです。
LPよりも自分のものが速いのは、確かめる必要の無い組み合わせを予め省いているからです。メモリの使用量も半分以下で済みます。

もっと速くてわかりやすい書き方がある場合は是非おしえてください!

2010/12/14

JavaScriptでミステリーサークルのようなものを自動生成

フラクタル図形等を作成する際によく用いられる形式文法L-Systemを使って、ミステリーサークルのようなものを自動で生成するものをつくりました。これにより、なんかの儀式にミステリーサークル的な模様が必要になった時に簡単に模様をつくることができます。でも、自分で念を込めて模様を考えたほうが、儀式はうまくいくと思います。

例えばこんな感じの模様ができます。

 

デモ
Key :






なにをしているのか
以下のようなL-Systemを構成し、JavaScriptでCanvasに描画しています。詳しくはソースコードを御覧ください。
Grammer
  Variables : 0
  Constants : [1-9][a-f]
  Start : 0
  Rule : 0 -> md5hash
  Iterate count : 3
ここでmd5hashというのはテキストエリアに入力された文字列のMD5Hash値です。
Semantics
  0 : なにもしない
  d=[1-9] : 左に d x 10 度回転
  a : 50前に直線を描いて進む
  b : 回れ右する
  c : 半径50の円を描く
  d : 原点に戻る
  e : 32前にジャンプする
  f : 半径32の円を描く


余談
テキストエリアに入力された値が同じであれば、同じ模様が出力されます。なにか面白い模様ができたらぜひKeyをコメントしてください!
MD5Hashの計算にはサイボウズ・ラボの光成茂雄さんのライブラリを使用させていただきました。ありがとうございます。

参考
Canvasに色々描いてみた - Webと文字

2010/11/26

Node.js Canvas共有に絵を保存するGallery機能追加しました

Canvas共有サーバーが機能しているかどうか、よくチェックしているのですが、たまに
「すごい!」
「wonderful!」
「ちょっとカクカクするけどすごい!感動!」
といったメッセージが書きこまれていることがありました。
こういうのを見ると、嬉しくなります!
それに加え、折角書いてもらった絵が保存されずに消されるのは勿体無いことだと感じたので、絵を保存する機能を付け加えました。

YkitamotoさんにcanvasのtoDataURLというメソッドを教えていただいたので、それを利用することにしました。クライアントがClearボタンを押すと、canvasのデータがbase64形式でエンコードされてサーバーに届きます。サーバーはそれをデコードして保存します。
消そうと思ったら保存されてしまうのです。消しゴムは今のところ意図的に付けていません。

デモ
こちらです。どんどん書いてください!
Galleryはこちら。WebSocketに対応していないブラウザでもGalleryは見れます。


参考文献
toDataURL() - WHATWG

2010/11/17

WebWorkersを使ってJavaScript並列素数計算

Web Workersはページ内でバックグラウンドで並列にスクリプトを実行するための機能です。メッセージパッシングでスレッドのような操作ができます。これを用いることにより、例えばJavaScriptで非常に時間のかかる処理をする際、ブラウザが固まってしまう状況を避けることができます。
今回はWeb Workersを使って並列に素数を数えてみようと思います。

以下のデモでは 1000000000001から 1000000001000までの素数を、子Workerを4つ生成し、それらに仕事を等分して分け与えて計算させています。( ) 内は子WorkerのIDです。
申し訳ありませんが、今のところFirefoxのみでしか動きません。ChromeやSafariではWorker内でWorkerオブジェクトにアクセス出来ないのです。

デモ
http://etsukata.com/js/ww.html


Souce code
ww.js
worker.js

Web Workersを触ってみて、これは「ミニErlangだ」と感じました。Erlang程自由にWorker間でメッセージを自由にやりとり出来ないものの、非同期メッセージパッシングというパラダイムは共通です。
Web Workersは単に「ブラウザが固まらないようにバックグラウンドで処理するだけのもの」ではありません。将来的にはJavaScriptでのマルチコアプログラミングや分散コンピューティングに使われるのでないかと予想しています。だいぶ先(5年以上)のことと思いますが。もしかすると、現在ErlangがやっていることがWeb Workersを用いてJavaScriptで記述されるようになる日が来るかもしれません。未来的超高水準言語JavaScriptがErlangすら内包するかも、と嘯いてみます。

nodejs.orgにありがたいお言葉を見つけましたので以下に転載します。
The fundamentals of scalable systems are fast networking and non-blocking design—the rest is message passing. In future versions, Node will be able to fork new processes (using the Web Workers API ) which fits well into the current design.


仕様が定まっておらず、実装が錯綜しているので今のところはなんとも言えない感触です。

追記
Chromeがsubworkerをつくることが出来ない問題についてhidekiyさんにより情報頂きました。いつもお世話になります。Chromiumにissueが出ています。
http://code.google.com/p/chromium/issues/detail?id=50432

参考文献
Web Workers specification - WHATWG
http://www.whatwg.org/specs/web-workers/current-work/
The Basics of Web Workers - HTML5Rocks
Using web workers - MDC
https://developer.mozilla.org/En/Using_web_workers